研修 M&A

先日、「社労士のためのM&Aの法律知識と労務リスク対応」というセミナーを受講しました。
 
 昨今、後継者がいないという問題を抱える中小企業が増えてきています。子供や優秀な経営者の素質がある社員で事業承継ができない場合、廃業かM&Aかが選択肢になります。
  
 M&Aであれば、経営者が新たな後継者にバトンタッチして引退することができ、従業員の雇用も引き継がれるというメリットがあります。また、一定の収益・資産を確保していれば企業規模にかかわらず事業売却が可能です。
 そのため最近は、後継ぎがいない場合、中小企業においても、廃業ではなく、M&Aで会社を売却する社長が徐々に増えてきています。
 財務のことは、税理士の先生にお任せすることにし、労務についてお伝えしたいと思います。

 従業員については、個別合意を取った上で、引き継がれるわけですから、M&A後の賃金改定に障害がないのかなど賃金や退職金など労働条件に対する確認が重要となります。

 まず、賃金規程や退職金規定を確認します。次に、未払い賃金はないのか、労使間でのトラブル(休職者や解雇者)等リスクを試算します。つまり、労働時間に対して適正に残業を支払っているのか、固定残業の有効性や管理監督者の問題などを確認するのです。M&A後に問題が発覚し、未払い賃金を支払うと買手会社としては資産が減少するリスクがあるので、事前に確認します。長時間労働によるリスクも甚大なものになる可能性にあるので、最悪の事態に備えて、損害保険加入の有無などを確認します。

 こうした財務や法務、労務の確認を経て、1か月~2カ月でスピーディーに最終契約します。

 実際、M&Aの成功するのは10社の内1~2社程度と言われています。

 M&Aを行う場合、銀行・投資会社また専門の仲介業者に依頼します。いずれの場合も成功報酬になるため、リスクが内在されているにもかかわらず、強引にすすめてしまう業者も存在します。専門の仲介業者は、1回きりの仕事でもう2度と会うこともないのですから。

 欧米のM&Aは、売り手側の仲介業者と買い手側の仲介業者は異なるのが一般的です。各仲介業者は、いかに有利に契約をするのかの真剣勝負ですが、日本の場合、売り手も買い手も同じ仲介業者でマッチングをするわけです。米国の仲介業に言わせれば、「同じ会社だなんて、クレイジーだ。」ということになります。

 仲介にあたるのが銀行等でしたら、その後の取引もあるので、あまり強引なことはしないと聞いています。仲介業者を選ぶことも成功に向けての重要な要因かと思われます。

 今後、益々中小企業でもM&Aが身近なものとなっていくものと思われます。色々な可能性を模索する価値はあるのではないでしょうか。