つながりのちから

 

 職場における「つながり」の効用について、興味深いコラムがあったのでご紹介します。

  

 職場において最も身近な「つながり」に、上司と部下との上下関係と同僚との横の関係があります。上司と同僚どちらの「つながり」が意味をもつのでしょうか。

 イスラエルのテルアビブ大学で20年にわたり、調査を実施しました。その結果、職場で仲間からの社会的サポートをほとんど受けていないグループは、サポートを受けていたグループと比べて調査中の死亡率が2.4倍にのぼっていました。一方で、上司が友好的であるかどうかは、死亡率にはほとんど影響しませんでした。

  つまり、上司のサポートよりも、同僚がどれだけサポートをしてくれるかが寿命に影響していたのです。

 

 この背景には、「ストレス」があると考えられます。ストレスを緩和してくれるのは上司ではなく、同僚たちとの「つながり」というわけです。

 

 では、職場内で同僚たちとの「つながり」をつくるにはどうしたらよいのでしょうか。多くの人は「飲み会」が効果的だと考えるかもしれません。日本では酒宴を通じて絆を強くする習慣が伝統的にあります。

 しかし、意外なことに重要なのは、「雑談」だということがわかってきました。

  

 アメリカの大手銀行のコールセンターの生産性の大きな差の要因を調べたところ、「雑談の多さ」で説明できることが明らかになりました。

  また、マサチューセッツ工科大学では、休憩室での何気ない雑談の重要性が明らかになったのです。この研究論文は、「優れた組織をつくるための新しい科学」と名づけられ、ビジネス界でも注目されています。

  

 なぜ、飲み会よりも「雑談」なのか、ヒントはシカゴ大学のロナルド・バート教授の理論にあります。社会的な「つながり」の最小単位を3人とする理論で、3人がつながると情報が効率的に回り、アイデアが生まれやすくなるというものです。

 

 しかし、3人以上で人数が多ければよいというわけでなく、たとえばカジュアルな会話ができる限界は4人といわれます。5人以上集まると、いくつかのグループに分かれてしまうことが知られています。

  

 仕事の生産性と創造性を高めるには、つながり方において、人間関係の三角形をつくることを意識すると良いのです。そして、この三角形をつなげるには、飲み会よりも雑談が適しています。 

 

予防医学からみた最新の健康習慣

 

  「つながり」の力による健康づくり  予防医学研究者 石川善樹)

 

 月間社労士20172月号より